2017年12月02日

#72:Nasty Music


11月3日(金)
猿の惑星創世記を観る。聖戦記が公開されているので、新三部作の一作目はどんなのかと思い借りてきた。
当然ながらお猿さんがたくさん出てきて、楽しい映画なのだけど、ハリー・ポッターのドラコ ・マルフォイ役のトム・フェルトンがいじわるキャラで出演していた。ハリーポッターで意地悪キャラだからといって、なにも似たようなキャラで使うこともあるまいにとアメリカ映画のキャスティングのイージーさを、猿にやっつけられるトム・フェルトンを眺めながら思った。

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11月4日(土)
明日ブレードランナーを観に行く予定なので、その前に自分の中で気分を盛り上げようとドゥニ・ヴィルヌーヴ祭りを行った。
祭りと言っても『メッセージ』を観ただけだけど。
娯楽性もあるけれど、どこか冷たい世界観は同じカナダ出身のデヴィッド・クローネンバーグを思い出させられる。
書いていて思い出したけれど、そういえばグザヴィエ・ドランも同じくフランス系カナダ人か。あれはもっとエモーショナル(ヒステリック?)だけれど。
ストーリーは『時間と空間を再解釈し再構築する』というような科学的・哲学的な内容を、映画の構造をうまく利用しエンターテイメント性も合わせ表現した、大変面白い作品だった。うまく言えないけれど、ドゥニ・ヴィルヌーヴの頭の中では常に「二つのこと」が同時に進行しているのではないか。ミュージシャンでもタイム感が人と違う、独特のリズムを作り出す人がいるが、実際にこの人は時間と空間の捉え方が普通の人とは違うのではないか。『複製された男』などはその思想が現れた最たるものではなかったか。そんなことを「御察しの通りメッセージの宇宙船はばかうけ≠ゥら影響を受けている」とコメントする監督の映像を見ながら思った。絶対ばかうけの影響は受けてないと思うけれど。

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11月5日(日)
『ブレードランナー2049』を二子玉川まで観に行く。1982年に公開された前作は、御多分に洩れず夢中になった。大気汚染がひどくなり絶え間なく酸性雨が降り続ける荒廃したロサンゼルス。現実世界の延長線上にあるのを感じさせるリアリティある未来都市の街並み、空を飛ぶポリススピナー、そしてロングコートを着て繰り広げられるハードボイルドな世界。スターウォーズとはまた違った、リアリティ溢れるSF世界は12歳の少年が夢中になる要素が詰まりすぎている作品だった。そりゃあやられますわな。
未来都市やスピナーのデザインをしたシド・ミードのデザインは35年経った今でも鑑賞に耐えうるし、今思うと私がこういう仕事に就いたきっかけの一つかもしれない。デッカードがつかっていたウイスキーグラスなんかメチャクチャカッコよかったものな、あれもシド・ミードなのか?
さて、今作だが、ドゥニ・ヴィルヌーヴの冷めた世界観はやはりブレードランナーに合っている。そして、とにかくロジャー・ディーキンスの映像が美しい。ノワールものが多いコーエン兄弟の作品の撮影で有名だが、ブレードランナー2049もフィルム・ノワールの要素が強いと思ったので、まさにうってつけの映像だった。
ライアン・ゴズリングの佇まいもいいし、この人がいなかったらこの企画も難しかったかもしれない。個人的には満足した続編だった。
しかし、これは仕方がないことだけど、やはり12歳の時の感動を上回るインパクトはなかったかもしれない。まあ、そりゃそうだ。12歳の時は何も知らなかったし、他にこのような作品もなかった。今ではCGを駆使する作品は今では山のようにあるし、私も47歳だ。
だが、デッカードとKが対峙するシーンにはおお≠ニ思ったし、前作のブレードランナーの世界観を大事に引き継ごうという姿勢が感じられて、1982年の頃を思い出してしまった。多分もう一度観るんじゃないか。それにしても、絶対柿の種からは影響受けてないと思うぞ。

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11月7日(火)
生まれて初めて人間ドックを受けるために東京ミッドタウンまで行く。人間ドックなんてそんなに楽しいイベントでもないから、少しでも気楽にうけられるようにと思い、クライアントさんから設備や環境がいいですよと教えて貰ったここに受けに来た。ミッドタウンのビルの高層階にセンターがあり、待合ロビーには大きな窓がありいい眺めだ。2~30人の受診者は男女共に受診着に着替え、ロビーで順番を待つ姿はまるでSF映画のようでなかなかシュールな光景だった。大きな窓からぼーっと外を眺め(遠くの風景を凝視して視力検査の時にちょっとでも視力を高めようと思い)ながら、頭の中にはカズオ・イシグロの『私を離さないで』が浮かんで、このままずっとこのサナトリウムのようなところにいて一生検査で終えるのも悪くないかもなどと白昼夢的な午前を過ごす。


11月10日(金)
X-MENシリーズの最終章ローガンを観る。人気シリーズにどう決着をつけるか、そしてペキンパーの『ワイルドバンチ』、イーストウッドの『許されざるもの』『グラントリノ』と同様、老いていくヒーローはどうするのかという物語だった。そういう意味では、成る程、ちゃんとヒーローに最後のステージを与えた映画だったのではないだろうか。
でも、これは私が年とったせいなのだけど、映画とはいえ小学生ぐらいの女の子が殺し合いに巻き込まれて(ミュータントだから)、そして元気いっぱい次から次へと人を殺していくのを見るのは正直しんどかった。いや、フィクションとはわかってるんですけどね…。

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11月17日(金)
なんとなくTUTAYAをブラブラしていて81年の狼男映画『ハウリング』が新たにDVD化されていたので借りる。
監督ジョー・ダンテ。グレムリンやトワイライトゾーン、インナースペースなどなど、80年代を過ごしたものとしては、名前をきいただけでワクワクする監督さんだ。当時11歳だった私にとっては、ほんとーに怖かったホラーなのだけど、今見るとビールカ片手に楽しく見られた。あんなに怖かったはずの狼男への変身シーンも微笑ましくて頑張れ頑張れと言った感じだ。今見るとツッコミどころいっぱいの映画だけど、当時は新しいスタイルの狼男映画と話題だったんですよ。ビールのお供にぜひどうぞ。

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11月20日(月)
立東舎から出版された音楽評論家・北中正和著『ロック史』の装丁をRedRoosterで手がけたのだが、著者の北中正和さんが原宿のペニーレーンで行ったトークイベントにお邪魔した。
10代からロックを聴いたてきた身としては、北中さんの書作から多くのことを学ばせていただいた。そんな方の本の装丁を担当するだけでも光栄なのに、実際にお会いできる機会ということでワクワクしながら原宿まで向かった。
このイベントは北中正和さんと、同じく音楽評論家天辰保文さんとのお二人で定期的に行っていて、今回は『北中正和と天辰保文の音楽と風景〜追憶の1973年』と銘打った、洋楽邦楽問わず73年にリリースされた楽曲のみを紹介し、それについてお二人が話していくという趣旨だった。
北中さんがお若い頃、ユーミンのレコードに点数をつけたら本人が編集部にクレーム(?)にきた話、ウェラーズのレゲエとロックが融合したような曲の紹介、ボサノヴァの名曲3月の水の歌詞がどれだけ素晴らしいかというお話、…などなど、名曲をお二人の私物のレコードで聴きながら、それにまつわる大変面白いお話が展開された。イベント前には北中さんにご挨拶もできて、自分自身が思春期の頃に教えを乞うた師匠に挨拶できたような、なんとも言えない感慨があった。

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11月24日(金)
11月25日は結婚記念日。なんと20年。すごいねこりゃ。
1日早いが記念にと夜食事に出かける。お店は、以前から一度行ってみたいと思っていた飯倉の老舗イタリアンレストラン、キャンティにした。
お店は地下にあって、店内は決して広くないがさすがの趣がある。お料理いただいてスタッフの方と話すと、さすがに名だたる常連さんたちが訪れたようだ。三島由紀夫も常連だったはずと思い話しをすると、盾の会を率いて市ヶ谷の自衛隊駐屯地に向かう前に、最後の食事をしたのがキャンティだったとのこと。そして驚いたことに三島の命日は11月25日だった。なんだか急に親近感が湧いてきた。帰って三島を読み返したくなった。

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11月30日(木)
いつもの店に深夜ふらりと行くと、マスターが「家を整理してたらこれが出てきたんで貸すよ」と言って
ストーンズの73年のブートレグアルバムを貸してもらう。調べると名ブートレグアルバムらしい。
ミック・テイラーのギターが素晴らしい。本当に《流れる》ようなギターだ。
よくストーンズの特徴を「ラフでルーズな」と表現するが、全然ラフでルーズじゃないぞ。かなりタイトだぞ。ちょっとキースのリズムがもたつくだけだぞ(そこが重要なのかも)。ストーンズの悪いところだけ影響をうけて、ダラダラなスタイルになっているバンドも多いけど、改めて聞くとしっかり演奏(しようと)している。何度聞いても新たな発見があって面白い。

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posted by 下山 at 03:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記